精密射出成形において、製品の「強度」や「機能信頼性」を根本から脅かす重大な成形不良が「ボイド(内部空洞・気泡)」です。
表面が凹む「ヒケ」とは異なり、ボイドは成形品の内部に発生するため、外観検査だけでは発見しにくいという厄介な性質を持っています。しかし、内部に空洞が存在すると、製品に負荷がかかった際に応力が集中し、予期せぬ割れや破損を引き起こす原因となります。特に高い寸法精度と構造強度が求められる精密構造部品において、ボイドは致命的な欠陥です。

本記事では、精密射出成形におけるボイドの「2大発生メカニズム」と「出やすい構造的特徴」、そして材料・金型・条件からアプローチする「ボイドを防ぐための具体的な対策」を体系的に解説します。
ボイドの根本的な発生メカニズム
射出成形におけるボイド(Void)は、発生のきっかけによって大きく「収縮によるボイド」と「ガスによるボイド」の2つに分類されます。それぞれの物理的なメカニズムを正しく理解しましょう。
1. 体積収縮に起因するボイド(真空ボイド)
溶融樹脂が冷却・固化する際の「体積収縮」が原因で発生するボイドです。
溶融樹脂が金型に注入されると、まず金型壁面に触れている製品表面(スキン層)から急速に冷えて固まります。その後、製品内部(コア層)が遅れて冷却・収縮していきますが、すでに製品表面が強固に固化している(肉厚や材料の特性による)場合、表面が内側に引っ張られずに耐えきります。
その結果、内部の樹脂が収縮した分が、行き場を失って内部で「真空の空間(空洞)」として残ってしまいます。これが収縮性のボイドです。
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2. ガス・空気の巻き込みに起因するボイド(気泡)
樹脂自体の収縮ではなく、成形プロセス中に発生した気体が成形品内部に閉じ込められることで発生するボイドです。
材料の乾燥不足によって発生した水蒸気、樹脂が熱分解したことで生じたガス、あるいは射出時にスクリューが巻き込んだ空気などが、金型内の高い圧力で圧縮されながら製品内部に残り、そのまま固化して気泡(空洞)となります。
ボイドが発生しやすい製品の構造的特徴
射出成形の現場では、製品設計の段階でボイドが発生しやすい形状を予測することが可能です。
- 局所的な厚肉部(肉厚の不均一): 周囲の薄肉部が先に固化してしまうと、厚肉部の中心を補填するための樹脂(保圧)が届かなくなります。結果として、厚肉部の中心付近に収縮ボイドが頻発します。
- リブやボスの付け根: 基本肉厚に対してリブ(補強壁)やボス(突起)が交差する部分は、構造的に樹脂の体積が大きくなる「熱だまり」になります。冷却が他より遅れるため、内部で収縮が起きやすく、ボイド(またはヒケ)の原因となります。
ボイドを防ぐための3つのアプローチ(根本対策)
ボイドを完全に解消するためには、「成形条件」「製品・金型設計」「材料管理」の3つの視点からアプローチすることが不可欠です。
① 成形条件の最適化
すでに金型が動いている場合、最も迅速に対応できるのが成形パラメータの調整です。
- 保圧・保圧時間の増大(収縮対策): 射出後の保圧を高く、時間を長く設定します。製品内部が冷却・収縮する瞬間に、シリンダーから絶えず新しい樹脂を押し込み(過充填気味にする)、空洞化を防ぎます。
- 射出速度の最適化(ガス・空気巻き込み対策): 射出速度が速すぎると、金型内の空気を巻き込みやすくなります。逆に遅すぎると樹脂が途中で固まり保圧が効かなくなります。流動状態に合わせて多段制御などを行い、最適な速度を設定します。
- 背圧の引き上げ(空気巻き込み対策): 計量(樹脂を溶かして溜める工程)時の背圧を上げることで、材料ペレットの隙間に含まれる空気を後方に追い出し、シリンダー内への空気の巻き込みを防止します。
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② 製品設計・金型設計による対策
根本的な解決と長期的な量産安定性を狙うには、設計段階での見直しが最も効果的です。
- 均一な肉厚設計(肉抜きの徹底): 局所的な厚肉を作らない設計(均一なウォール厚)を心がけ、ボスやリブの根元には適切な「肉抜き」を施して熱だまりを排除します。
- ゲート位置の変更とゲートサイズの拡大: 厚肉部の近くにゲートを配置し、ゲートの断面積を大きくします。これにより、厚肉部の中心が固まる直前までしっかりと保圧が届く流路を確保します。
- 効果的なガスベント(排気口)の設置: 金型内のガスや空気をスムーズに外部へ逃がすため、適切な位置にガスベントを設けます。これにより、ガスが製品内部に押し込められて気泡ボイドになるのを防ぎます。
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③ 材料選定と材料管理
使用するプラスチック材料の特性や管理状態も、ボイド発生に深く関わっています。
- 徹底した予備乾燥(ガス対策): 特に吸湿性の高いエンジニアリングプラスチック(PAやPBT、PCなど)は、乾燥不足のまま成形すると水分がシリンダー内で一瞬で水蒸気(ガス)に変わり、無数の気泡ボイドを発生させます。材料メーカー推奨の温度と時間で、除湿乾燥機を用いて確実に乾燥させてください。
- 低収縮性材料へのグレード変更: 収縮率の大きい結晶性樹脂(POMやPPなど)から、収縮率の小さい非晶性樹脂(PCやABSなど)への変更や、ガラス繊維(GF)などが配合された「低収縮グレード」を選定することで、物理的な収縮ボイドを大幅に抑制できます。
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まとめ
精密射出成形におけるボイドは、「表面固化後の内部体積収縮(真空空洞)」または「ガスや空気の閉じ込め(気泡)」という2つの異なるメカニズムによって発生します。
対策を講じる際は、発生しているボイドが「収縮性」なのか「ガス性」なのかをまず見極めることが重要です(例えば、保圧を上げて消える場合は収縮性、消えない・位置が変わる場合はガス性の可能性が高くなります)。
当サイト「精密射出成形ソリューション」では、超音波探傷やX線CTといった検査を用いて内部ボイドの挙動を的確に捉え、金型設計や成形技術へのフィードバックを行うことで、ボイドレスの高品質な精密成形品を実現しています。「内部の空洞が原因で製品が割れてしまう」「厚肉部のボイドがどうしても消えない」とお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

