

ABS樹脂は、熱可塑性樹脂に分類される汎用プラスチックであり、3種類の成分(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)を組み合わせることで、剛性、耐衝撃性、加工性をバランスよく備えた非常に使い勝手の良い材料です。
具体的な特徴は以下の通りです。
①優れた耐衝撃性と剛性
ゴム成分であるブタジエンを含んでいるため、高い耐衝撃性を備えています。同時にスチレンによる剛性も併せ持っており、硬さと粘り強さを両立しているのが特徴です。その頑丈さから、スーツケースや建材など、日常のハードな使用に耐える製品に幅広く利用されています。
②良好な成形性
スチレン成分により溶融時の流動性が非常に高く、複雑な形状でも精密に成形することが可能です。また、成形品の表面に美しい光沢が出るため、塗装やメッキといった二次加工なしでも意匠性に優れた製品に仕上がります。この特性から、家電製品の外装等にも多用されています。
③優れた寸法安定性
非晶性樹脂であるため、成形収縮率が小さく、温度変化や吸湿による寸法変化も比較的少ない材料です。設計通りの寸法を再現しやすく、部品同士の嵌め合いが重要な精密機器の筐体や、自動車の内装部品などにおいても重宝されています。
④容易な二次加工(塗装・メッキ・接着)
樹脂材料の中でも特に塗装やメッキの乗りが良いことで知られています。金属のような質感を出すクロムメッキ処理も容易に行えるため、自動車のエンブレムやドアハンドル、高級感の求められる家電部品等にも最適です。
⑤耐候性に注意
多くの優れた特性を持つ一方で、直射日光(紫外線)には注意が必要です。長時間屋外で使用すると、ブタジエン成分が劣化して変色や脆化(もろくなる現象)が発生しやすくなります。屋外で使用する場合には、耐候性グレードの選定や塗装による表面保護が重要となります。
⑥耐薬品性(有機溶剤)に注意
酸やアルカリには比較的強い耐性を示しますが、シンナーやベンジンなどの有機溶剤、一部の油脂類には弱い傾向があります。これらが付着すると、表面が溶けたりひび割れ(ケミカルクラック)が生じたりすることがあるため、使用環境や洗浄剤の選定には事前の評価が必要です。

